新聞記事の基本構造

あらゆる出来事を伝える新聞記事。その書き方にはいろいろなルールと読みやすくするための工夫があります。これらを知り、真似ることで伝わりやすい文章が書けるようになるのです。

この記事では

  • 新聞記事の基本構造
  • 文章力を上げる方法

について解説していきます。

発行部数が減るなど凋落傾向にある新聞社ですが、出来事を素早く、正しく、分かりやすい文章にしてまとめる総合力は既存メディアの中でずば抜けています

その新聞記事を有効活用して文章を磨き、就職試験やPR文言、社内会議のプレゼンなどで他者と差別化を図ってください。

新聞記事の基本構造

新聞記事の特徴は主に3つです。

  • 5W1Hの情報が盛り込まれている
  • 逆三角形で書かれている
  • 前文に出来事、理由、意義が盛り込まれている

この特徴を1つずつ紹介していきます。

5W1Hとは

基本中の基本です。いつ(when)、どこで(where)、誰が(who)、何を(what)、なぜ(why)、どうした(how)。この要素を満たせば最低限の情報は伝わります

:3日午後3時50分ごろ(when)、東京都中央区の国道4号線で(where)、男性の運転する大型トラックが(who)、カーブを曲がり切れずに横転し(how)、歩道に乗り上げた(what)。スピードの出し過ぎ(why)が原因とみられる。

よくある事故原稿ですが、この要素だけでおおまかにどんな事故が起きたのか想像できますよね。逆に言うと、これらが一つでも欠けていると人に伝える情報としては「不明確」の烙印が押されます。

匿名記者

もっとも、事件事故の初報でwhyやhow、whoまで把握できないことはよくあります。重大性にもよりますが、どこで何が起きたかだけでニュースにする場合もあるのです

※補足ですが、事件事故の場合はhowの要素が抜ける場合がよくあります。どのような事故なのか、どのような犯罪なのか、は往々にして発生時には分からないからです。

例えば、トラックが車に追突した事故だと分かっても、どのような追突状況だったのかは分からない、人が殴られる傷害事件だったとしても、どのように殴られたかは分からないということがあります。

ただ、これらは重要な情報ではありません「追突した」「殴った」という事実に変わりはないからです

匿名記者

細かい情報を追って、速報性を損ねることのないようにしましょう

「逆三角形」の書き方とは

逆三角形とはどういう意味でしょうか。一言で言えば、「大事な情報から書いていく」ということです。

例えば以下のような断片情報があった場合、どう並べ替えるのが逆三角形と言えるでしょうか。

  1. 隣国がミサイルを打ってくるかもしれない
  2. 政府が米国から情報提供を受けて分かった
  3. 沖縄・南西諸島が被害に遭う可能性が高い
  4. すでに発射体勢に入っているとみられる
  5. 国民のシェルター保有率は3%だ

正解は①→③→④→②→⑤です。実際に並び替えて記事風に仕立ててみます。

隣国がミサイル発射実験を計画していることが11日、分かった。実際に打ち上げられれば沖縄・南西諸島方面へ落下する可能性が高い。すでに発射準備に入っているとみられる。政府関係者によると、米国からの情報提供を受けて判明した。ミサイルが着弾した場合、国民一人当たりのシェルター保有率は約3パーセントにとどまり、甚大な被害が出る恐れがある。

なぜ、①→③→④→②→⑤の順に重要なのか解説します
が最も重要なのは隣国のミサイル発射というのは国民共通の関心事項であると予想できるからです。
その次がなのはお分かりでしょう。②は実際に被害が出る可能性が高いのはどこかという記述です。より具体的な地域に関して注意喚起しています

次に知りたいのは「いつ発射するのか」というですよね。これが仮に100年後に撃つというなら話は変わってきます。ただ、ミサイル発射は差し迫っているようです。この位置が妥当でしょう。

についてです。このあたりから重要度が下がってきます。この情報源がどこなのかは国民にとってあまり関係ないでしょう。ただ、読者は「米国という世界ナンバーワン軍事大国かつ日本の同盟国が言っているから本当だろう」ぐらいは思うかもしれません。記事の確からしさの裏付けとなる記述です。

最後にです。いよいよ必要性がありません。シェルターがあろうがなかろうが着弾すれば無事ではすみません。ミサイル発射というニュースとは直接関係がない情報です。

匿名記者

この記事は誰に向けて、何のために書くのかを考えると情報を並べる順番が整理しやすくなります

次に逆三角形で書くメリットを紹介します。

逆三角形のメリット
  • 早くニュースの肝を伝えられる
  • 削りたいときは後ろから削除するだけ

記事の大前提には「読者の時間は限られている」という考えがあります。仮に朝の5分しか時間がない読者に何を伝える記事なのか即座に分かってもらえなければ、読んでもらえないかもしれないからです。

何が起きたのか最初の一文を読んだだけで分かるには1行目がニュースのエッセンスでなければなりません

匿名記者

余談ですが、記事の内容を最も適切に表現したのが「見出し」です。記事そのものを読む時間がない日は見出しだけ目を通すのもありです

逆三角形で書くもう一つのメリットは、記事を削りやすいからです。これは内輪の事情ですが、新聞は締め切り時間(校了時間)に向けてどんどん記事の内容を差し替えていきます。

例えば締め切り10分前に特大ニュースが入ってきたのに紙幅が足りない。そんなときに記事の末尾からどんどん削っていくわけです。

末尾ほどどうでもいい情報が書いてあるからです。

前文の重要性

新聞記事の最初の一段落目のことを「前文(まえぶん)」もしくは「リード」と言います。この前文、超重要です。とりわけ時間がない人は前文だけ読めばOKです

前文の構成要素は

  • 結論(出来事)
  • 結論に至った理由
  • 結論が持つ意味

の3つからなります。これも例を出して解説します。

気象庁は11日、局地的に大雨が降り、土砂災害や河川の氾濫が発生する恐れがあるとして、九州地方に大雨警報を発令した。南から湿った暖かい空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となっているためだ。10年に一度の大雨になる可能性もあるため早めの非難を呼び掛けている。

このような記事があったとすると、結論に相当するのが「大雨警報を発令した」の部分。そして「大気の状態が非常に不安定となっている」が理由「10年に一度の大雨になる可能性もある」が意味に相当します。

どうでしょう。

何が起きた、なぜ起きた、それはどんな意味を持つのか、という3点が分かれば大半の読者はおそらくニュースに対して納得できるでしょう。

新聞記事の前文にはこの3要素が基本的に盛り込まれています。社会人など忙しい方は前文だけ読んでニュースの概要をざっくり把握しておくのもいいと思います。。

匿名記者

ちなみに3要素のうちの「意味」の部分は、関係者談話でも可とされています。いずれにしろ、その出来事が持つ意義を記す部分です

文章力を上げるには

ここで言う文章力とは人に情報を伝達するための文章です。

文章力を上げるには、記事の書き写しと要約がおすすめです。ポイントは以下の通りです。

  • 書かれている情報の順番を意識しよう
  • ほかの言い回しはないか考えよう
  • つまり何がニュースなのか要約しよう
匿名記者

この3つを半年継続してみてください。自分では気づかなくても確実に力はつきます。私は大学時代の4年間、要約だけは欠かしませんでした

記事の書き写しが有効

まず最初は記事を構成している情報の順番を意識しながら、ノートに書き写しましょう。初めての人はかなりの労力です。最初のうちは一面トップの記事だけで十分です。

なぜこの書き出しから始めたのか、誰に何を伝える想定の記事なのか、自分が書き手だったらどんな順番で記事を書くかー。こんなことを考え、納得感を得ながら進めてください。

匿名記者

考えた結果、新聞記事と同じ順番にならなくてもいいのです。記事が100%正しいとは限りません。自分の判断に理由が伴っていれば問題ありません

違う表現に変更を

次のポイントです。記事とは違う言い回しを探してください。

例えば

国内の書道愛好者でつくる団体「書壇会」による作品展が11日、東京・江東区の東京ビッグサイトで開かれ、会員約2千人が記した作品約5千点が訪れた人たちを楽しませている。会期は今月30日までで、入場料は一人千円。

という記事の前文があったとします。この記事の言い回しを変えてみます。

国内の書家有志による団体「書壇会」による書道作品展が11日、江東区の東京ビッグサイトで開かれ、約2千人が記した書や書画約5千点が来場者の目を楽しませている。会期は今月30日まで入場料は一人千円。

黄色の文字に変更した上、「東京・江東区」→「江東区」、「会員約2千人」→「2千人」、末尾の助詞「で、」を句点にしました。

変更した理由は細かいので省きますが、どちらが正解というわけではありません。ただ、以上のような言い回しの変更を自分で考え抜くことは大きな力になります。

要約してみよう

記事の究極の要約は見出しです。その見出しを自分で考える訓練をする一方、150字~200字程度で要はどんなニュースなのか、自分で文章にまとめてみてください。

150字~200字は、新聞の前文と同じボリュームです。そのくらいの文字量が相手に伝わるおおよその量なのです。

ツイッターの文量より少し多いくらいが興味を持ってもらえる限界なんです。

匿名記者

この量感で日頃から話題をまとめる訓練をしておけば、分かりやすい文章という評価にグッと近づきます。

まとめ

新聞記事は人に情報を伝えるために考え抜かれた構造になっています。その特徴を解きほぐして理解したり、真似たりするのが文章力の向上には一番です。

やや手間のかかる作業ですが、習慣化できれば確実にレベルアップします。1日10分でもOKなので地道に取り組みましょう。

文章力を上げるコツ
  • 文章を書く際は5W1H情報を入れよう
  • インパクトが大きい情報から書き出そう
  • その情報が持つ意味も記そう
  • 新聞記事を自分なりに書き換えてみよう

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

error: このコンテンツはコピーできません